夜のベランダ、マスターベーション/とんぼ
隣の部屋のカップルは
毎晩遅くまで話をしている
笑い声がわたしのベットまで聞こえていて 眠れない
わたしは耳をすます
彼らがセックスをするとき
わたしは自分の恥部に手を当てて
そこから何も生まれないことと
そこで何も死んでいないことを確認する
今日、恋人の首にあった誰かのキスマーク
そこが出発点
かわいい人
くちびるはそこからどこへ向かったの
そうして彼のあえぎ声がわたしを殺す
自分のくちびるに手を当てる
顔の中でそこだけが熱い
冷えた右手でふれるとすぐにぬるくなる
わたしの中にある優しさを全部足したくらいの熱さになる
わたしのくちびるは何も産まない何も殺さない
遠くなれ遠くなれ 声
戻る 編 削 Point(4)