月夜の散歩/shu
 
泡がいっぱい出てくる。
男はだんだん真剣な口調になってくる。

―やめてくれ。愛してるから。
 なっ そんなことすんな

よく見ると女が手にしているのは石鹸だ。
石鹸をなにかナイフのようなもので削っては
口に運んでいる。
ぶくぶくぶくぶくと女の口から泡が吹き出し
しゃぼんが舞い始める。
半狂乱になって喚いていた男の声が小さくなる。
口はパクパク動いている。
だけど声がすぐに消えてしまう。
見るとしゃぼん玉の中に男の吐き出した言葉が
すっぽり入ってふわふわ浮いている。

「愛してルーッ」

と何度も叫んでいるらしい。
『して』と『愛』と『
[次のページ]
戻る   Point(8)