思い出しメロディー/なかがわひろか
 
そういやこの曲を聴いていたときに
君はすでに死んでたんだね
なんだか不思議だね
僕がこんなに素敵な音楽を聴いているときに
君はとっくにこの世にいないなんて

あのとき僕はどんな思いでこの曲を聴いていたろう
ただ漠然と生きていることが苦しいと思うことくらいで
君が死んでから過ぎていく初めての時間の中で
僕は死ぬことでも考えながら口ずさんでいたのかなあ

君が死んでから
いつまでが君が死んだ時間なんだろうって
僕は今でも考えるんだ
君はあれから三年経っても
相変わらず死んでいるから
君は何も僕に語ることなく
今でもずっと死に続けているからさ
ああきっと
今日も明日も
来年の今頃も
君は死んでいるんだなあって思うんだ

だからこのメロディーを聴いたらさ
僕はいつも君の死の始まりを感じるんだ
だから僕はときどきこのメロディーを聴かなきゃならない
ときどき忘れそうになるからさ
君が今日も死んでいることを

(「思い出しメロディー」)

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