夏を想う/うめバア
また
草の匂いのする、夏が来る
ホームから駆け下りて
5時17分の各駅停車に間に合うように
大人たちが向かう方向とは
ずっと、ずっと
逆に走ろうと決めて
あの人からは
降りだした雨と同じ
マイルドセブンの香りがした
重だるい蒸し暑さ
直後の、冷徹な風の声
激しい雨が連れてくる
直情型の季節
ぬれるのが嫌だから
電話ボックスに逃げ込む
ポケットの10円玉を突っ込んで
覚えてる友だちの家に
ダイヤルする投げやり
あの瞬間
ガキの時代が
最終レーンを回ろうとしてた
自分は
全速力で
駆け抜ける予定だった
あれからまた
草の匂いのする
夏が来る
戻る 編 削 Point(2)