六月のキイホール/唐草フウ
 
小さなまどから
両手を広げたら
境も 閊(つか)える枠もなかった

風は湿り気
きょうもいくつもの紙ふうせん
昇ってゆく
まだ、両手広げたまま 吸って 吐いて


十字架のかたちをした お守りのような君は
青葉の匂いで
抱えるようにとけこめば
指をすてて
髪がなびき
やわらかいものになってゆくさいぼう
道の両端に は
じゅうもうが続く


小さなまどから
いくらでも自分の手は伸ばせるつづく

時間も計画もない空間
ゆめじゃないよ
説明のない授業のしおり
名まえは六月





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