残照/たりぽん(大理 奔)
 

骨のような夏が街におりてくる
空はまぶしすぎて暗示しない
目を細めて輪郭や影を
確かな物にしようとしているだけで

湿った風は川からあがってくる潮の香りがする
どこか遠いところまでいつか流れ着く
飛べない折り鶴がただよいながら

  眠りたければねむればいいと僕が言う
  二人で居るときは目覚めていたいと君が言う
  
こんなにも激しく照らされても
見えないものに怯えてふるえる
遠くの茅を揺らすものの正体を
ボロボロのはねで空をよこぎる猛禽を
僕ではないもののすべてと
僕でしかないもののすべてと
夏がおりてくる

まぶしすぎて狭苦しい
見えないのなら
くらやみとおなじあおいそら

眠りたければねむってしまえばいい
暗闇はいつでも手に入る
君のあおが、僕のあおと違ってもかまわない

どこまで明るければいいのだろう
夏は、あくまでも骨のように



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