「ビル風の残渣が遺していったもの」/Leaf
 
高層ビルディング周辺特有の吹き下ろすビル風はオープンテラスの流行るカフェテリアをもろともせず、容赦なく殺伐なる様式美を叩き付けた


無感情のリズムは鹿威しの清廉さに似たサイクルで取り巻いた静謐と人工滝に淀むしめやかな喪失感を水面に映った自分に問いたくなるほど余りに無くしてしまったものが多すぎて息苦しくなる



   周りの子供たちがパラソルの陽影で飯事を始めた
   風に吹かれ麦藁帽子が靡いて首紐がくるんとなる


   無邪気にぼんやりと眺めていたら止めどなく感情が溢れてきた
   こんなビル風とたまに戯れる


そしてビルとビルの合間を抜けた何かは海豚に追われた小鰯のサーディン・ランに似ていた

ビル風が駆け抜けた先の吹き溜まりはサーモンが孵った川へと遡上し、振り絞った死力を尽くした痕の涕涙の残渣だった


そして僕は暫く、辺りを徘徊したあと、名残惜しくその僅かなビルとビルの隙間に還っていく



                         BGM: JUDE/新しい風
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