テツコの部屋/たもつ
 
 
テツコの部屋で発生した台風が太平洋を北上している間
僕は書き損じた地図記号をひたすら地面に埋め続けている
そのわずかな等高線の隙間を魚色の快速列車が通過し
客車の窓から覗き込んでいるのは多彩な顔ぶれの
生き急ぐゲストの皆さんだ
テツコはできたての人形のような良い香りがする
僕はテツコが好き

テツコはテツコの部屋で
テツコの部屋について考えることに夢中
テツコの身体は卑猥なナマモノだから
頭蓋骨と頭蓋骨の温度が一致しないことに迷惑
下水道に未接続な福祉施設の顛末について語る僕の唇のことは
実写版のソファーにもたれかかったまま
昨日すでに夢に見てしまった
ねえ、テ
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