ア、雨/
あ。
もう一度だけ白い花びらに視線を移すと
すぐに背中を向けて走り出した
足元で水たまりがぱしゃぱしゃと軽い音を立てる
家に帰ると扉を閉めて
洗い立てのバスタオルで髪を拭いた
服を着替え、ベッドに飛び乗るように倒れこむ
かぎなれた自分の匂いがした
わざわざしんどい道を選ばなくても
歩きやすいほうが近ければそっちを選ぶ
苦しいことが美徳だとは思わない
楽に生きることを愚かだとも思わない
ア、雨だなんて軽く呟けるなら
こんなに幸せなことはないんだ
戻る
編
削
Point
(9)