田園パレット/夏嶋 真子
 
わたしの家は 田んぼの田の字の真ん中にたっていて 画家が住んでいます
誰も彼の姿をみたことはないのですが 彼は確かにいるのです
どの故郷にも どの町にも どの家にも 彼は必ずいるのです





冬、
画家のパレットは白一色です
彼が守るのは
銀色にとがった大気をくるむ
真綿の雪の子守唄

 こんこん こんこ
 こんこん こんこ

そして彼もまた眠れる子供のひとり
雪は母に
母は子供に
子供は土に
土は夢に笑うのです

風雪の町で血潮のあたたかさは命そのもの
夢の最下層で描かれる彼の絵は 
氷刃のエネルギーを命へ溶かし 
萌芽の温度を春へと
[次のページ]
戻る   Point(19)