田園パレット/夏嶋 真子
わたしの家は 田んぼの田の字の真ん中にたっていて 画家が住んでいます
誰も彼の姿をみたことはないのですが 彼は確かにいるのです
どの故郷にも どの町にも どの家にも 彼は必ずいるのです
冬、
画家のパレットは白一色です
彼が守るのは
銀色にとがった大気をくるむ
真綿の雪の子守唄
こんこん こんこ
こんこん こんこ
そして彼もまた眠れる子供のひとり
雪は母に
母は子供に
子供は土に
土は夢に笑うのです
風雪の町で血潮のあたたかさは命そのもの
夢の最下層で描かれる彼の絵は
氷刃のエネルギーを命へ溶かし
萌芽の温度を春へと
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