一人部屋/灯兎
 
君が指先に残した温度が
痛みのない傷となって
つま先までかけ巡るあいだに
僕はカップにへばりついたコーヒーの粉みたいな
君の思いを辿る夢を見た

逢いたいと呟いたところで
有限の時間の中に少し居座っただけの僕は
春が夏に部屋を明け渡すのと同じ軽やかさで
君の記憶から消えているのだろう
そうであってほしいと
そうあるべきなのだと
思う距離を
憧憬師のステップで歩いていた

そういうものが全部合わさって
生きることの重さをなしているのならば
それほど悪いものではないのかもしれない

通りをひとつ隔てた公園の
滑り台に座って
ふたつ並んだ月をながめていた君が
その重さに足を取られて
頭から落ちていくのを
止められずに
僕はただ泣いていたのだけれど

広いベッドの隅まで朝は明けなくて
孤独の痛みを知ってしまって
数えきれない罪を数えるという罰を受けたのは
確かにまだ髪の短かった僕だから
償いは永遠と分かたれるのでしょうか

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