/石黒
 
庭先に佇んでいたものたちのことも
雨宿りをした六月のことも
匂い立つ土や
おまえの首すじ
おまえの乳房がしなだれてゆく午後には
もう振り返ることができない

36度5分の雨が
37度5分に変わり
その生温かさに燃えてゆくのは
いつになるのか

あの星はいま
風邪を引いている
高熱のなかで見た夢のことを
おまえは教えてくれた

星々や鳥たちの余熱が尾を引き
わたしたちの傘を貫いてゆくとき
この夜空にも
草花の香りにも
わたしたちは
わたしたちの体温をささげた

いくどとなく見てきた夕暮れをおまえは知らない
それはおまえの体温によく似ている
それはわたしに似ている
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