波雨/木立 悟
 


月のまわりに
月と同じ輪があり
水平線に沈みながら回っている
輪は海にひろがり
波は光を打ち寄せる



屋根が 鳥が
騒がしく雨を知る
ずっと空を見つめていた目が
いつのまにか消え去っていて
目のかたちをした音だけが
雨と雲の間を漂っている



たくさんの蝶が葉の陰を飛び
ときおりぶつかってはくるくる回る
雨を避けて集まってくる音
集まっても集まっても聴こえない
ただそこに見えるだけの小さな音



滝のように空に落ち
滝のように地に爆ぜる
曲がりくねる海の道
雨の羽を抱く青の道
波のかたちに揺れる道
打ち寄せる光の輪を見つめ
月の声を聴きつづけている





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