マーメイド/蒸発王
私は昔人魚だったのよ
と
全てが終わった後に彼女は言った
確かに
彼女の両足は
かかとから
太ももの後ろにかけて
大きく長い切り傷がある
王子様を捜しに2本の足を作って貰ったのよ
と
ひらひらとつま先を翻すと
なるほど
爪に塗られた真っ青なペディキュアが
本来の尾ひれの名残を思わせた
その割に君はおしゃべりだな
声は失ったんじゃなかったのか
と問うと
あのおとぎ話は嘘っぱちなのよ
あの人魚姫は本当は声が出たの
愛してるってちゃんと言えたのよ
彼女は歌うように呟いた
でも
捨てられてしまった
彼女には声を失うよりもっと
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