緋恋の指輪/蒸発王
 
ら全てプレゼントされる約束だったが

其の指輪だけは
許されなかった


(なぜ?)

と訪ねる私に

母は

 大人になって
 本当の恋をしてごらんなさい
 燃えるような
 心身を投げ打つような
 醜く美しい恋を
 そしてそれに破れた時の痛みを
 経験してごらんなさい

 心臓を無くしてしまう程の
 その痛みも
 やがては時が癒してくれるものです


(忘れるということ?)


 痛みだけはね
 それでも
 其の思いだけは貴方の指先に遺り
 いつしか誇りに変わるでしょう
 彼を愛した
 誇り
 という「指輪」に


そう言
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