森の奥/杉菜 晃
森の奥深くさまよっていると
重なり合う枝の
青黒い梢の繁みの中から
ふと
神の視線を感じた
見上げる先に
二つの眼光炯炯として
高妙なる
大ふくろう
神でこそなかったが
あの厳かな静けさは
わが脳中に
ただならぬ佇まいを
刻印した
群れず鳴かず動かず
そこにあるだけで辺りを払い
その波動が全山を支配している
孤絶を嘆かず憂えもせず
ゆったりと鎮座して
神よ
それでもあれは神ではないと?
「しかり 神は一つのみ
在りて有る神
われはいかなる偶像も好まず
犬も偶像 猫も偶像
太陽も偶像
月も偶像
金も偶像
神の認めぬ人間も偶像
男も偶像
女も偶像」
その声ははるか高みから
晴天の霹靂のごと
わが耳を刺し貫いた
声のあと
蒼穹に白いしるしが抉られていた
掠れずぼけず滲まず
両端ある
飛行機雲のように
くっきり
一と
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