探 偵/
塔野夏子
いたかもしれない
信号が青に変わる
探偵は歩きだす
それはいったい誰との どんな約束だ?
いや待て そもそも自分は
誰に依頼され 誰の心のアリバイを探しているのだ?
探偵は身体が冷えてきたのを感じる
珈琲が飲みたくなる なじみの店へと向かうことにする
心は なつかしい場所へと
飛んでいたかもしれない――それが誰のであろうと
ではその場所はどこだろう?
探偵はせつなくなる
探偵は郵便局の角を曲がる
歩きながら やがて溜息をひとつつく
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