その日はセックスしなかった/虹村 凌
 
六畳に敷かれた万年床に横たわって
彼女は幸せだと呟いた
彼女の彼氏が会社に向かうのを
俺と二人で見送った後に
彼女は六畳に敷かれた万年床で
幸せだと呟いた

その日はセックスはしなかった
こんな事は秘密でも何でもない
彼女の彼氏だって知ってる

六畳に敷かれた万年床に横たわって
彼女は幸せだと呟いた
俺は随分昔の事を思い出して
あの時みたいに三人で眠りたいなと思った
もう一人は彼女の彼氏じゃなくて
俺の好きな人

その日もセックスはしなかった
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