ライチ/
 
僕が撮った戦争の写真を君は「こんなのリアルとちがう。」とにべもない。
僕はすりむいた膝や痣ののこる肋骨の辺りとかを必死にアピールするが
「音もない戦争なんてボケたライチの果肉よ」
何をいってるんだ、ボケてもライチの白さはリアルそのものじゃないか。
したたる汁や皮のざらつきはリアルじゃないのか。
まったく意味がわからない。君には少しも恐怖とかかわいそうとかないのか。
僕は死体に囲まれていたんだぞ叫びと銃声に囲まれていたんだぞ僕も死ぬかもしれなかったんだぞ皆死んでたんだぞあの血溜まりあの崩れた家.....
「あなたが死んだならリアルね。私のリアル。私泣くわ。戦争を憎むわ。」
僕はライチを齧る。うまくないやつだこれ。
生きていてよかった。
ここからリアルが遠のいてしまった気がしたけど。
戻る   Point(2)