蝸牛/ae96
 
「 蝸牛 」  
目まぐるしく迫り来る日々は気だるく 
居場所を見失いそうなほどの静けさに戸惑いながら 
傷だらけの両の手で 
決して届かぬ銀色の夜空を掻きむしる。 
永遠の不条理と奇跡の黄金比が崩れ去るとき 
刹那に夢想する旅人は地平に堕ちる月に魅せられる。 
悪魔の涙に映る富豪の不幸も 
一滴の野生の光の最後を見届けようとする聖者の苦悩も 
日常に反逆しようとする 労働階級の喘ぎ声も 
神の棺へと続く生命の羅列となる。 
時の配列を狂わせるほど強烈で艶かしい淫靡な神秘が 
宇宙という饒舌な小説の一小節を述べる。 
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)