影と手のひら/木立 悟
火に話しかけて
(夜の原のうつせみ)
応えはなく
空は硬く鳴る
花が降りてきては飛び去る
鳥は川を下る
無言がかがやき
鳥のあとを追う
花の楽器を
ひとつひとつわたし
でも やり方はないのです
鳴るときがきたら 鳴るのです
楽器から楽器が生まれ
原へ原へ打ち寄せる
火の粉 火の子 うたいだす
火の粉 火の子 消えてゆく
夕べの音を
さがしもとめた
遠のくものを
ひとつの指で描きながら
鳥の会話
大陸の端から端
失くしたものは すぐそばに響く
たどりつけぬまま 響いている
眠り 覚
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