無名/
フクスケ
夜毎
幾重にも重なり合う
夜のとばりの中で
子供のように
うずくまるもの
それは
命名しようとすると
いなくなる
「名前なんかいらない」
と うそぶく
「そんなのなくても
寂しくないもの」
うつ向いて
よく見えない
おまえの瞳を
感じながら
夜が
ためらいながら
過ぎて行く
一瞬
青空の夢を見た
それから
名無しのおまえは
子供みたいに
ほんの少し笑って
すれ違うように
夜明けの光の中に
消えた
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