ヤサシクナリタイ/霜天
 
ンはいつも混んでいて。一度離れては、合流。迷い続け
るもの多数のため、必然なのか、必然なのか。二時間枠の、筋書
き通りのドラマに潜ませた別れ。かたちを変えなければ、わたし
たちは気付けない、のか。手を振る暇もないほどに、その機会に
気付けぬほどに。わたしの内包、内部構造。単純なプログラムを
何度も書き直して。


わたし、たち、が、いま、なりたいこ、と。


気付けば優しくなれなかった。すれ違う手の距離感は狂うばかり
なのか。正しいのは時計だけなのか。秒針の、音。私たちは刻ま
れている、私たちは纏められている。同義語の隣人、類推しやす
い他人、そんな括りを背負わされて。この街は乾く、砂を、噛み
しめる。手に広げたものは、大事なことではなかったのか。同じ
顔の隣人が尋ねると、同じ顔の他人が頷く。わたしはどこから、
だったのだろう。


やさしくなりたい。それだけで掴んでいるはずで。


私たちは纏められている。乾いた砂を内包して、今日も、零れて
いる。
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