いうなれば赤だ/鈴木まみどり
六本木には、ラフとかPDFとかマージンとかいう言葉が転がっていて、
私はもうそういう言葉が身体化してしまったことに目を細める
いや、あるいは、風のせいだったのかもしれないけれど
何にせよ、
美しくきらめくこの街を、嫌いきれないのは私自身なのだ
おかしくもばかばかしくもある、16時半
立ち上がる瞬間、脚のあいだをすべり落ちる、不快
エスカレータの前をゆく、見知らぬ足の動きや、
スーツ率90パーセント、無邪気なその発言が、愛すべきもの
ようやっとたどり着いた木目調のトイレで、ほんとうに、うずくまる
両手で、わざと狭くした視野
ふと、
深夜のお風呂場で膝に舌を這わせた時のように、ここは孤独だ
言うなれば、今日の私は、赤だ
生きていく甲斐などなくても、結局、私から立ちこめる生の匂い
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