金魚/北野つづみ
からだ
金魚鉢は確か次の日買った気がする
三匹いたうちの二匹は
青いプラスチックバケツのなか
翌朝には死んでしまって
それでも残った一匹は
丈夫なタチだったらしく
ずいぶん大きくなって
小さくて可愛らしい金魚が本当は
大食いの
のっそりした
鮒の仲間なんだと教えてくれた
金魚の体のなかにも
水が含まれていただろう
(人体に含まれる水分は
全体の何パーセントだったろう?)
あの金魚どこへいった
記憶にない
いま、いないということはたぶん
死んだんだ
それでは死骸を
わたしはどうしたろう?
祖母が死んだ時は火葬した
初めて
人間の骨というものを見た
箸で持ち上げると崩れてしまう
白く乾いたもろい骨
焼かれてしまった肉体の
細胞の中の水は
焼き場の灰色の煙突を通って
やはり空へ還ったのか
青空をぼんやり眺めている
あ、あの雲
金魚の形をしている
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