Fish/ホロウ・シカエルボク
 
ひとつが少しずつずれていく。ゴールテープが移動し続けるマラソンみたいなものさ。ゴールテープが見えていると、ランナーは諦めないだろう。ばたりと倒れるまでは。そんなこと、どうでもいい話かもな。俺だけが理解していれば済む話だ。なにもかも理解してみたところでどうすることも出来はしない、予期せぬものを下から覗かれているみたいにさ。見失わない距離に居てくれる君の背中を俺は眺める。俺は感動して泣いてしまうのだ。母親のような遠慮のない愛とは違う、背中の在り方。君はいつでも俺のことを待ってくれている。ありがとう、ありがとう、君が道標になってくれる間だけは、俺は正気でいることが出来るような気がするよ。鳥たちの声が高くなり、気温が上がり始める。ねえ君、太陽が昇るよ。君、明るくなる。俺は君の背中を追う。君の気遣いを無駄にしてしまうような速度で。君は振り返って涙の乾いた俺の頬を見る。そして笑うのだ。ちゃんと見ていたいのに君の後ろから太陽が昇り始める。




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