Fish/ホロウ・シカエルボク
早い朝の淡い光線に君は濡れながらそれでも整然とした様子でそこに生きていた、俺は喉に突っかかるような痛みを覚えながら君の名前を呼ぼうとしたが、記憶に栓をされているみたいにそれはままならなかった。伸びすぎた前髪が警告のように風に揺れて目の前に垂れさがる、それは君の姿をキャベツのように細かく刻んでしまう、初夏の草のにおいがうるさいくらい俺たちの周辺で騒いで、それだけで俺はなにかこの場にそぐわない己の魂のことをこの上なく恥じてしまうのだ。夜っぴて降り続いた雨の後の朝に遠くからやってくる風にはすうすうという音が似合う、悪夢に浸食されない寝息のようなノイズ。もうなにも咲かない枝のそばで君は遊んでい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)