天根の辻/田代深子
 


天根の辻で水をもらう
日の暮れるには早い刻で
このまま休みたくもあり
まだ行くかとも計り
いつまでもたばこをのむ

新開通の鉄道がここいらを
過ぎ越してさびれた土産屋
小唄の焼かれた碗をとり
あちらはどうだったと聞かれ
こっちのほうはどうだと訊ね

かたつく椅子をあそばせる
おいてきた猫をおもい
あずけた腕をおもう
もどるわけにはいかないが
とどまることはどうだろう


 思いあぐねた夕よりも
 恋うてこがれた明けよりも
 はずみころげた夜やよし


宵の道中にわかの雨

たまり水に膝からくずおれる
のどから高い息が出て
雨ともに吸わ
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