伏竜/
千波 一也
雨のなか、
竜が
咲いていた
それは
瞳が
見たのだったか、
耳が
聴いたの
だったか、
あまり上手に
思い出せないけれど、
あ、お、
夏には遠い未熟な夏が
空へと一途に
澄み渡り、
ぬくもるような
胸の痛みが
目を
覚ます
雨のなか、
いまでも竜は
咲いている
透明に、
ひとつの雨の
無限を
翔けて
降りそそぎ、
降りそそぐ日を
咲いている
戻る
編
削
Point
(3)