伏竜/千波 一也
 


雨のなか、

竜が
咲いていた



それは

瞳が
見たのだったか、

耳が
聴いたの
だったか、


あまり上手に
思い出せないけれど、


 あ、お、


夏には遠い未熟な夏が
空へと一途に
澄み渡り、

ぬくもるような
胸の痛みが
目を
覚ます



雨のなか、

いまでも竜は
咲いている


透明に、
ひとつの雨の
無限を
翔けて


降りそそぎ、

降りそそぐ日を
咲いている







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