夏休み/遊佐
少年が
新たな課題を求めて小さな冒険を始めようと、擦り切れた図鑑を片手に小躍りをする
僕の中には取り残された宿題が山積みで
進化する速度が追いつかなくて
苦笑いしながら書き足す絵日記の1ページ
年々、変わって行く西瓜の味に
味覚が鈍ったとは嘆かずに
西瓜の味が落ちたんだと、しかめっ面する父さんの顔が
雲の切れ間に浮かんで消えた午後
暑くならない夏と
熱くなる夏
*
何時だって
世界は僕等を愛しているんだ
愛する人をなくした後も、こうして僕らを育んで行く
過ぎて行く時を愛しもう
来年もまた、夏はやって来る
僕らは記憶の欠片を少しずつ取り出して
山積みになった宿題を片付けて行けばいいのさ
遠い夏、夏休み
熱い夏と暑くならない夏と
父さんの笑顔と
僕の苦笑い
一つに融けて
終わらない夏休み
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