『山原水鶏、蒼穹に弧描く』/Leaf
かいう意義を感じたことはない、と
狩りを終えた彼は緋縅の甲冑を外すように蹲踞した
恋しくもない蒼穹を仰ぎ
届かぬと知ってその短い手で
弧を描いてしまう習性(つよがり)にも涙しない
私は如何程の筋肉にも自惚れてはいない、と
彼はその強靭な脚力を以て裸体のまま車道へ跳躍した
それは偶然なのか、
通り掛かった
呆気無かった
呆気無く文明の利器に轢かれ平たくなった
予期していたかのようなその端然とした姿の儘に逝ってしまった
そこには雄々しさがあった
それでよかった
噬臍(ぜいせい)の悔いなど微塵もなかった
稀少なものは稀少な儘で
そのこと自体だけを以ての価値はない、と
眉白(まみじろ)水鶏が申したとか、いや否か
いづれにせよ俺たちも調整の具になる
いや、もう既にそうか
そんな些細な戯音
気にしな、
い筈もない
BGM:Green Day/Wake Me Up When September Ends
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