零の色/悠祈
 
迸る鮮血がブーゲンヴィリアの赤になり
夏の陽だまりが向日葵の黄を匂わせている。
それと喚かなくとも
存在自体がある色調を帯びているような
そんな確かな色が僕にはない。
微かに茫洋と滲んでいるようではあるけれど
空気のように猥雑で誰の目にもとまらない。
皆が華やかにさんざめくのを見ていると
僕は僕を黒く塗り潰してやりたくなる。
もっと以前(まえ)に殺(や)っておけばよかったんだ。
野放しのまま変色劣化した聖と俗の二重螺旋は
骨の軋むひ弱な身体を飽かず蝕みながら
擦り切れた魂を縊死に追い遣るための
永久ループに過ぎないから。

少しの事にも耐えられなくなってきた。
こんな気持ちのままで永く生きられるはずがない。
闇の雫がこころを貫き
愛しい君が朽ちた人形になる前に
僕は僕を砕いて土に還してやるんだ。








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