背中の窓/
塔野夏子
気づくと
背中に窓があった
木の枠の 両開きの窓だ
閉じられているその窓を
覗き込んでいる自分がいた
中には 止まった時計と
傾いだ天秤が見えた
やがてその窓の中にも
自分があらわれて
窓に近づくとそれを開け放った
そして窓の中の自分と
窓の外の自分とは
言葉を交わした
ありふれた挨拶と
お天気の話だ
気づくと
背中に窓があった
窓の中の自分にも 窓の外の自分にも
やはり木の枠の 両開きの窓だ
中には 止まった時計と
傾いだ天秤が見えた
戻る
編
削
Point
(7)