走る 金の獅子/瀬戸内海
銀河の汽笛を口ずさみ
かっこうが飛び去った空を
虫を喉で暴れさせながら
小さな猫のもとへ
走る 金の獅子
はにかみ並ぶ信号機の色を伺いながら
小さな杉の上をびゅんびゅん駈け
酒に溺れるあまがえるを横眼に
サウザンクロウスをひとっ跳び
幻燈会の上を又三郎に歌われながら
差し出された団子を頬張り
走る 金の獅子
噴き出す火山のマグマを踏んで
大きく足を腫らせても
走る 金の獅子
もっと足を腫らせて泣いている猫のもとへと
急げ 金の獅子
足を引き摺りながら歩く 猫
ちょこんと座った椅子の上
帳簿のない机では仕事もできずにただ 涙
じっと見つめる机の上
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