消えてゆく/みぞるる
切ない光がもたらす鏡の中の私は、
決して触れることができなくて、
あたしは確かにそのことを知っている。
走る一瞬
抱き合う一瞬
まばたきの一瞬
花の香りを嗅ぐ一瞬
おやすみと微笑みの一瞬
いつ、触れられないことを嘆いたことがあっただろう。
何度も、時計の針を戻したりもしたけれど。
あたしは私を、
かかすことなく着実に失っている。
失っている。
貴方だって、ココにはいてくれない。
過去の写真を見て、
心のどこかで羨ましく思うのは、
彼女たちは光の切なさに、いつまでも無敵だから。
だけど
一瞬の私が、かかすことなく存在していることも、
あたしは確かに知っている。
かたちを留めない美しさを、
触れることのできない確実さを、
心はいつも光の後を追っていて、
いつまでたっても決して追いつけないから、
私がかかすことなく過去になってゆく確実さを、
まばたきの一瞬に、
微笑みの一瞬に受けとめよう。
だからこそ
形を留めておける私たち。
この、消えてゆく一瞬に。
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