宇宙の闇/吉岡ペペロ
 
中二の国語の授業で先生が三篇の小説を朗読してくれた
そのうちのひとつは中間試験に出題されたが
あとのふたつはただ朗読されただけだった
先生の野太くて高い声が教室をしんとさせた
ふだつきの悪だった私も彼の朗読に静かに酔った
私立中だから有り得た授業だったのだろう
楢山節考、泥の河、蛍川と朗読は続いた
蛍川の最後を先生が朗読し終えたとき
全身の毛穴という毛穴が開ききり
私は宇宙の闇にぽかんと浮かんだ
あのとき私を包んだ感覚は
確かに「自由」としか言いようのないものだった
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