ベルリン/モリマサ公
 
んで
匂いのしない過去なんてなかった
動画になって切り取られていく記録にも
もう名前なんかつけなくてもいいんだよ

眠っている細い月をいくつもゆらしながらにじんでいく
深い底のない影が一枚になってつながっていく
どこまでも果てしがないことに絶望しなくてもいいんだよ

くらやみの奥に向かう迷路をかべづたいにすすみ
また扉をあける
沈黙したひふのような布のようななにかをかきわけながら
さみしくなんかなくてもいいんだよ

目を閉じるときや開く瞬間に
だれも平等なんかじゃなくてもいいんだよ

重要なことなんかどこにもなかった
知らないことも知っていることも
それが最初
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