「五月の風にさそわれて」/ベンジャミン
 
誰に教わったわけでもないけれど
新しい始まりの予感は
そうやってくる

五月の風は
そんな淡い期待を感じさせる
芽吹きの音が聞こえてきそうな緑色で
あなたは窓から入り込んでくる風を
そのまま吸い込むように深呼吸しながら
まるでその芽吹きの瞬間を知っているかのように
見える景色の端から端までを見渡して
小さく笑っている

初夏ですから
でもまだ初夏と呼ぶには早すぎる日もあって
五月の風にあたっているあなたが
両肩をすくめて抱きかかえるのを
僕は少し心配したりするけれど
あなたはそんな心配をかき消すように
庭で咲きそうな花の名前を
楽しそうに教えてくれる


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