リンゴの涙は紅茶のなみだ/ひとなつ
私は、かよわい手首
白銀の傷痕を握りしめるのがやっとのことだけど
「私って、キレイでしょ」
かよわい手首はコクリと頷くように
リンゴを突き刺した
「私の白銀の傷痕の切れ味を肯定してよ」
手首がそう言うと
リンゴは、まるで自分の運命を知ったように
砕けて、花びらのように散った
「嗚呼、無惨だわ、無惨だわ無惨だわ」
あおむけに、ひらかれた、ものいわぬ果肉は
白い浴槽に投げ出された
「でもね」
その陶器のような白さよりも
私はもっと白々しいのよ
私は、あたかもそれを偶然目撃した清掃婦のようにこう尋ねた
「ひど
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