ほんのうのとなり/靜ト
がよぎって
自分に心底ぞっとする
女(の人間) であること
手を止めて、放心する
部屋中の物をもてる限りかき集めて
ドアを足であけて
安アパートの螺旋階段の前に立つ
ひとつ、ひとつ
一段、一段 に
並べていく
目覚まし 果物ナイフ 紙コップ ルームキー 写真 手紙 写真 あの人の写真…
一番上まで行ったら空を見る
ずっと見る
ずっとずっと見ていることをけれども望むだけ
女であることも人であることも忘れるまで
ずっと
ずっとずっと
骨になるまで
骨も風にさらわれていくまで
さらわれた骨が誰かの上を通り過ぎるまで
そうしているうちに
体の中が浮くような感じがして
また元の私に戻る
戻ってまた今日も女は生きてゆく
ほんのうのとなりに立ちつくして
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