夜の淵から墜ちる/衿野果歩
白く清潔な四角に
閉じ込められる夜は
寝返りばかりうっている
シーツのまだ冷たい方へ
まだ冷たい方へ
そうして考える
あの人の隣りにいた頃は
右向きに寝ていたんだっけ?
まだ冷たい方へ
寝返り一回転半分の孤独
そうして考える
あの人の胸の高さは
ちょうどこのくらいだったっけ?
腕の太さは?
寝息のリズムは?
この髪をなでる
手の平の熱は?
シーツの隅から隅まで
もう どこにも
あの人のシアワセの欠片が
残っていないと知った夜は
ああ
ようやく眠れる
夜の淵から墜ちる
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