泣き空/こめ
ハローハロー聞こえますか?
殺伐とした絵画の中で
その少女の顔だけが
まだ手をつけられていなかった
ふるびた懐中時計は
なりやまない秒針の音を
闇夜に響かせる
ふたつに割った板チョコを
片方を僕に
もう片方は僕の陰に捧げた
永遠はいつも終焉の
隣の席に座っていた
くるくる回る地球を軸に
この銀河はやむことのない
複雑にでも単純な数式に
挑んではまた壁にぶちあたっていた
ようするに何かがたりないってことだった
戦場の中でも
そこからは悲しみの音楽が
耐えず響き
頭の芯の脳髄まで揺さぶり
べっとりと両耳にこびりつき
離れることをしなかった
傘を盗まれ
ずぶぬれになる体は
水分を吸い込みしだいに重くなり
そしてとうとう倒れてしまうほどの量になっていた
もう遅いかなとそのまま
仰向けになり最後にみた景色は
どんよりと曇った空の泣き顔だった
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