辺の音/木立 悟
すぎるものが
激しく影を投げ捨ててゆく
そのままをそのままに伝えぬための
激しい縦の音がつづく
暗い虫が空を突き
風は夜明けよりもわずかに明るい
光は曇をふりかえる
曇は曇のままでいる
用意は用意されていたか
許しを得ねばならぬものか
許しを得ねばならぬものなら
すべて跳び越え すべて踏み越える
爪で圧せる範囲
爪で隠せる汚れ
呑みこんでいる 冬の原の色
呑みこんでゆく
明るい 冷たい
ひとり 明るい
どこまでも馳せる
ひとりはためく
夜は夜を借りて降り
川の洞のすみ じっとしている
宝石を見つ
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