草冠とレインクラウン/虫の宇宙/海里
見に来たわけではないのです
小エビを掬いに来たのです
けれども夜の二級河川に
いくつか光が見え隠れ
常夜灯が水に映るかと
とぎれとぎれは風のせいかと
思えばふうわり飛び立って
すうっと光の尾をひいて
ああ、初めて見ましたよ
一匹ずつがなんて明るい
網に受け止め指先に
乗せれば小さな光の球が
まあるく広がりきったところで
ふうわりまぁるくまた縮む
脈動変光星のよう
歌の挿絵に描かれるとおりの
光り方する虫でした
ふわり、ちかりの明滅こそは
彼らたちのID
借り物の立夏に
マンドラゴラの実りの季節に
光跡の軌跡の奇跡
とぎれとぎれの消えないキレイ
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