波紋のように広がっていく/いとう
汗ばむほどの陽光の
照り返しに遮られて
わたしはまた
前が見えない
夜のうちに拾った
指たちをつなげても
それは手にならないのだ
誰かの声の届く範囲に
いるはずなのだが
それなのにいつも
何も聴こえない
ような気がして
前ではなく
上を見上げると
空には鳥たちもいない
目をつむり
その場に佇むと
ようやく誰かの声が聞こえる
ような気がするが
それは錯覚で
やはり何も聴こえない
ような気もして
思わず目を開け
見渡すと
誰もが目をつむり
その場に佇んでいて
そのさらに遠くでは
誰かが
空を見上げようとしている
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