即興掌詩4点/佐々宝砂
 

ゆらゆら消えてゆく夜の名残
遠ざかる舟のようなこだま
どうか夜を忘れないで
あのこの髪をだきしめてあげて
あのこの心を
はかなく消えるものなのだから
あのこのかみもこころもあのしろくかがやく胸も



からから笑いながら猫は去る
かがやく砂浜に置き忘れたトランペット
おーいと叫びながら波に足をとられている
影がこの世界を覆い尽くすとしても
かがやく砂浜 トランペットの金属光沢
あれは決して消えはしない
さてユートピアはもちろん此の世のものではないけれど
ちょっと旅に出ようか
鉄路でも道路でも空路でもない道をたどり



星が奏でる音楽を知る者は少数
図書館の本の数より人生があるとしても
人生の楽しみを知る者は少数
数百年前の響きが星雲をへだててもどってくる午前
人生の楽しみが反響するあの音を知る者はさらに少数
明け方の空に光っていた火星、金星
あの輝きを知るのはたぶん人類のごくわずか
でも
輝きを知るものは確かにいるのだ
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