動機の喪失/
高橋魚
私には
鉄が足りないようだ
あらゆる物には
磁石が内臓されているのだが
微量の鉄を
引き付けるほどの磁力は稀なのだ
動脈血のような西の空を見ると
私は逆方向に飛ばされ
光沢のある少年に会った
その光は
鉄の不在を証明する
私は時間によって酸化させられたのだ
鉄はもう鉄ではなかった
かつての光沢は失われ
私はものに触れることもなく
ものに動かされることもなく
朝には全てを忘れている
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