川のような、もの/霜天
トーキョー
川のようなもの
手のひらに残ったすれ違う人の一片
あれが私たちの足跡の塊
掴もうとしなかっただけ、なんて
強がりの溶けた夕暮れの音
誰かが落としたぶんだけ
あの川は大きくなるの
そう言ったあの子は
左側を落とした後で影のよう、に動けなくなった
無くすことができるんだ、誰だって
トーキョー
零れ落ちていく先は
誰にも見せない
右から左へ
下から上へ
流れに流れるしかなくなって
目を塞いでしまうことが多くなった
手のひらに残った
川のような、もの
一片、の人影
無くなってしまって
トーキョー
川から零れたもの
それが私たちの足跡の塊
そう言って君は
傾きながら、眠った
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