点景/生田
さの割に店員が多く、普通の店ではないのだろうと気づいたが、事前に説明を求めておくべきだったと軽く後悔を覚えた。今風の若い男たちを相手に二、三の話をした後はストレートと注文したのにロックできたウィスキーを水と変わらんな、とちびちびと舐めていた。さして興味がある話題もなく、店員の些細な会話術も見え透いたものであった。そういったものは、面白くないわけでもなかったが、店の提供しているものに対して斜に構えて相手するのも悪かろう、と適当な相槌を打つことに終始した。
その場に欲しいものがない時、私という点は小さくしか動かない。焦点の定まらない点が周囲を右往左往しているのを眺める。金で繋いだ間に合わせの交流は寂しい風景であったが、砂糖菓子のような甘えたな部分があり、笑いの種にしかならなかった。友人がこのような場所を必要としていたのか、と別れてから今までの彼女の迷いようが手に取るようにみえ、可笑しかった。何か礼をしてやろう。気を使うように、私の手を触れる彼女の手を握り返した。少し驚きをみせた彼女を顔をみるのは愉快だった。もっと愉快にしてやろう、衝突もたまには面白い。
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