点景/生田
見開いたノートに二本の線を交互に書き伸ばしていた。線が交わることのないように気をつけながら。常に、今、線の先、点をみつめながら。どれだけの遍歴を経ようと、点のみをみれば、もう片方が向かい側に見える。正対している。
信じていないのだ。人と諍いをおこさないわけを問われ、笑って流したその後に、漠然と気づく。諍いから生まれるものを信じていないのだ、私は。それは、わびしい事に思えた。歩くときは一人がいい。誰かが隣にいる道程は苦しすぎる。
時に、人と接しながら、二本の線を思い浮かべる。二本の線のまま進むには限界がある。次のページに行くように、人は切り替わらない。動きを抑える。衝突を先送る。
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